塩の種類と選び方

塩の種類と選び方
塩は毎日の料理に欠かせない調味料です。摂り過ぎは健康を害しますが、不足しても不調をきたします。適切な量を摂ることを心がけつつ、たくさんある曖昧な情報にまどわされないようにしながら塩選びを楽しんでいけると、料理の幅もグッと幅が広がっていきます。
※医師により減塩の指示が出ている場合は忠実に従いましょう。
ー目次ー 塩の種類 精製塩と自然塩 1.岩塩 2.天日塩 3.せんごう塩 立釜製法の塩 平釜製法の塩 塩の選び方 1.精製塩にするのか自然塩にするのか、グレーゾーンで手を打つのか 2.調理面から考える塩の選び方 3.「味」で選ぶ楽しさ 塩を買うときに何を見ればいいのか 動画 執筆者 |
塩の種類
精製塩と自然塩
精製塩とは、主に海外などから輸入した原塩をいったん溶かし、塩化ナトリウム99.5%以上の高純度の塩に精製したものを指します。「食卓塩」や「食塩」がそれに当たります。塩化ナトリウム=塩辛さに直結するので、ストレートな塩辛さになります。パキッとした切れのある塩味を出したい時には向いています。
自然塩(もしくは天然塩)というのはそもそも明確な定義はなく、実はかなり曖昧な分類です。精製塩以外は自然塩といっても過言ではないぐらい、その範囲は広く、多岐に及んでいます。自然塩ならば体に良さそう、健康維持になると思われがちですが、塩は塩であることに違いありません。自然塩だから気にせずたくさん摂ってもいいということはあり得ないので、その言葉にまどわされないようにしましょう。
実際は、塩=以下の岩塩、天日塩(天日干しする塩)、せんごう塩(釜で炊く塩)の3種に分かれることを知っておくといいと思います。(他に、湖塩、藻塩などもありますが主ではないのでここでは省きます)。
1.岩塩

元々海水があったところが隆起して陸地になり、干上がったところにできた塩のことです。日本に岩塩はないのですべて海外物になります。左のもののようなピンクソルトをよく見かけるかと思いますが、ピンク色は主に鉄分の色です。右側は白い粒状の岩塩を立窯製法(後述)によりサラサラにしたものです。他に黒みがかったものなどもあります。色によって成分や味に多少の差が出ます。
2.天日塩

海水を塩田にひきこみ、太陽(天日)をあてることで水分を蒸発させて作った塩です。雨の多い日本ではなかなか作ることが難しい塩で、ほぼ見かけません。右側の「ゲランドの塩」(フランス・ブルターニュ地方)が天日塩としては有名どころです。とてもマイルドな塩です。
3.せんごう塩(釜で炊く塩)
日本では主流の「釜」で炊く塩のことです。海水、または海外から輸入した塩(岩塩や天日塩含む)を水で溶かしたものを煮詰め、結晶化させたものです。
せんごう塩は、立釜(縦に長い釜)で炊いた塩と平釜(平たくて広い釜)で炊いた塩に分かれます。
立窯製法の塩

縦に長い釜にふたをして作ります。釜が縦に長いとたくさんの釜を配置でき、効率よく大量に作れるのが特徴。価格もグッと抑えることができ、安価で流通させることができます。
精製塩の「食卓塩」もこの仲間です。精製塩と聞くと、化学的に作った悪い塩では?と思われがちですが、必ずしもそう断定できるわけではなく、メキシコの天日塩を溶解して不純物を取り除き、立釜で炊いた塩です。製造工程で海水を使っていないため、ミネラルが含まれないのが特徴です。良く言えば「純度の高い塩」、悪く言えば「ミネラルがない塩」になります。
国産の海水で作った「和の豊塩」や「瀬戸のほんじお」も立窯製法なので、食卓塩と同じ製法で作った塩ですが、海水を使うためミネラルを含みます。どちらも国産の海水を使っている純国産塩ですが、製法が効率よく生産できる立釜なので安価です。
ちなみに伯方の塩は、海外の天日塩を日本国内で水や海水に溶かし、新たにミネラルを加えて成分を調整し、立窯製法で再結晶させて作る「再生加工塩」という分類になります。
和の豊塩、瀬戸のほんじお、伯方の塩ともに、精製塩と自然塩の間に位置するような塩です。
ところで、塩に含まれるミネラルって何? 塩の主な成分は、前述したナトリウムと塩素からできる「塩化ナトリウム」で塩のほとんどを占めますが、それ以外の部分=ミネラルと考えるとわかりやすいと思います。カリウム、マグネシウム、カルシウムなどがそれにあたり、人間の体には必要な成分になります。 ミネラルが多くなるとそれだけ食塩相当量の数字が下がるので、味わいがただ塩辛いだけではなくマイルドさややわらかさが出てきます。 考え方の詳細は「塩の選び方」で後述します。 |
平釜製法の塩

立窯製法がふたをするのに対し、平釜はふたをせず、平たい釜で地道に「煮詰める」という手間暇をかけた塩です。釜の場所も人手も必要になり、立窯で作るように効率的かつ大量生産はできないため、価格もそれなりになってきます。
ただし、海外の天日塩を原料に使っているもの(この中ではあらしお)は、平釜でもお手頃価格になります。フルール・ド・セルも海外塩を使っていますが、日本の海水を混ぜ(再生加工塩の製法)、さらに乾燥させて結晶化させるという工程が入っているので、こちらはそこそこの価格です。
自然塩という定義はとても曖昧だということを前述しましたが、恐らく市場では、国内の海水を平釜製法で作った塩を「自然塩」と呼ぶ傾向にあるようです。
塩の選び方
1.精製塩にするのか自然塩にするのか、その間で手を打つのか
精製塩だから体に悪い、自然塩だからたくさん摂っていいということはないことを前述しましたが、要は「ミネラル」の部分をどう考えるかによると思います。塩化ナトリウムだけを摂るよりは、体に必要なミネラルが含まれる塩のほうが体にいい!というのが、塩においてよく言われることですが、塩の一日の摂取量は
男性:1日あたり7.5g未満
女性:1日あたり6.5g未満
であり、小さじ1杯強の範囲で得られるミネラルは実は微々たるものになります。それは他の食品から簡単に摂取できるミネラル量であり、味噌汁1杯でも充分に得られる量であることは知っておかなければなりません。
塩からミネラルを何がなんでも摂るという考えよりは、どれも塩であることには変わりなく、摂り方によっては自然塩でも精製塩でもその間の塩でも同じように成人病につながっていくと考えましょう。それでも塩は体に欠かせない大事な成分であり、生命維持にはかかせない日々の調味料であるので、味わい、使い勝手、好み、金銭面を考慮し、どれを手に取ったとしても「適切な量」を使って行くことがまず一番大切なことだと思います。
2.調理面から考える塩の選び方
というわけで、どの塩であっても適切な量を使うことを大前提に、調理面の使い勝手で塩をいろいろ使い分けてみるのがおすすめです。
まずは以下2種類用意してみるのはどうでしょうか
・スプーンなどでまとめて入れても問題のない塩
汁物、煮込み料理、混ぜ物など、スプーンを使ってある程度の量を入れられる時は、しっとりとした塩、粒の粗い塩などでも問題なく使えます。特にだし汁を使う和食には、ミネラルが多いまろやかな塩が合うので、平釜で作ったしっとり系の自然塩などがよく合うでしょう。
・サラサラと広がるように散る塩
肉や魚などの焼き物、野菜の炒め物などには、サラっと全体に広がる塩がおすすめ。塩味をガツンときかせたい場合には、ミネラル分が多い塩だと物足りなく感じることもあるので、食塩相当量が高い塩を選ぶのもいいですし、各メーカー、焼き塩などのサラサラした塩を出しているので、そういったものを選ぶのもおすすめです。魚の下処理などにも使い安いです。
他、調理法により特定の塩が向いている場合もあります。 例:保存食である梅干し、白菜漬けなど、素材に塩をまとわり付かせて作る「漬ける」調理法には、「粗塩」を使う、など。 |
3.「味」や「食感」で選ぶ楽しさ
難しく考えず、好みの「味」で決めるのが一番楽しいものです。おにぎりにはこれ、ステーキにはこれ、といった感じでお気に入りの味の塩を見つけ、使い分けてみましょう。
また、カリッとした食感が楽しめる塩をサラダ系に使ったり、きめ細かいフワッとした塩を天ぷらに使ったりして楽しむのもおすすめです。
私は、魚や野菜炒め、麺類には調理面で広がりやすいサラサラとした焼き塩を、肉料理や野菜のソテー、おにぎりにはサラッとして使いやすく、かつ味もマイルドなゲランドの塩を、煮物や汁物にはミネラル多めの瀬戸の本塩や購入しやすい伯方の塩を、卓上ではカリッとした食感が楽しめるフルール・ド・セルを、といった感じで使い分けています。といってもこだわりがあるわけではなく、気になればいろいろな塩を試しますよ!正しい量を使いながら、塩選びも気軽に楽しんでいけるといいですね。
塩を買うときに何を見ればいいのか
各塩のパッケージの裏面を必ず見ましょう。上記で述べたいろいろなことがヒントのようにちりばめられています。
日本で製造した塩の場合は、
・原料(原塩)がどこの国のものか
・立釜か平釜か
の2点は必ず記載してあります。まれに、釜製法ではない場合は「天日」や「乾燥」などといった製法が記載してあるでしょう。「溶解」とあるものは、海外の「天日塩」をいったん溶かしたパターンが多いです。
「立釜」だったら原料が何であっても安価=精製塩~精製塩と自然塩の間の塩
「平釜」&国産海水だったら高価=俗に言う自然塩
ということになります。参考までに。
動画
2021年5月の第1回オンラインレッスンで「塩」についてかなり詳しくお話しています。
※以下はレッスン生の方のみ観ていただける動画になっております。
執筆者
家庭料理研究家:JUNA(神田智美)