昆布の種類と特徴

昆布の種類と特徴
昆布だしはうま味の土台として、和食はもちろん、洋食、中華などにも使える万能なだしです。おいしい昆布だしをひくためには昆布の種類とその特徴を知ることがとても大切です。
昆布のうま味成分は「グルタミン酸」。トマトやチーズなどに含まれるうま味成分と同じです。他のどんなうま味成分とも掛け合わせやすいのが特徴です。
ー目次ー 産地による代表的4分類 1.日高昆布 2.利尻昆布 3.真昆布 4.羅臼昆布 その他よく見かける昆布 1.早煮昆布 2.切り出し昆布 3.根昆布 昆布の選び方 昆布の使い方と保存方法 昆布だしのひき方 水出しについて 昆布だしを使った料理例 昆布を使った他のだし ヨウ素についての考え方 執筆者 |
産地による代表的4分類
国内産昆布の95%が北海道で、採れる地域によって名称が分かれています。
1.日高昆布

北海道、日高地方で採れる昆布。コストがほどほどなため、スーパーなどの小売店に必ずといっていいほどおいてあります。関東で割と好まれがち。 昆布そのものの香りは強めで、煮出しただしも昆布の香りがわりと強めに出ます。磯臭と感じることも。香りの割に、他の昆布に比べるとうま味が弱いので塩味を感じづらく、「薄い」印象を受けるかもしれません。うま味を強く出したい場合は、他の昆布のときよりも少し多めに使うといいでしょう。煮出した場合はねばりが少し強めに出ます。 他の昆布より繊維質が少なめなため、昆布巻きに使ったりだしをとった後佃煮にしたりするのに向いています。 ひいただしは透明感があり、黄味がかっています。 |
2.利尻昆布

北海道北部にある利尻島、礼文島(れぶんとう)、稚内沿岸で採れる昆布を「利尻昆布」と言います。高級昆布の部類で京料理などに好んで使われますが、スーパーなどの小売店に並ぶものは買い求めやすい価格で売っているため狙い目です。 (昆布には等級があるため、小売店にはそれほど等級が高いものは並ばないため) 上品でクセがなく、透明感のある香り高いだしをひくことができます。すっきりとしたうま味を出すことも。ひいただしは、少しだけ赤みが入った黄金色になります。 家庭料理としては、そのクセの少なさから、和食はもちろん洋食や中華など幅広く使うことができます。 煮出した後の昆布はかなり硬めです。佃煮などにできないことはないですが、かなり歯ごたえのある仕上がりに。チップスなどにするほうが向いています。 |
3.真昆布

函館市を中心とした道南沿岸で採れる昆布。青森、岩手などでも採れます。利尻昆布同様に高級昆布となり、等級が高いものはやはり高価。肉厚で幅広、味も見た目も良質とされています。 ひいただしは甘みもあってまろやかになり、少しだけ塩味を感じる上品なうま味が出ます。香りは利尻昆布のだしほどは出ません。黄金色の澄んだだしがひけます。 大阪など関西ではわりと好んで使われます。 |
4.羅臼昆布

だしの王様と言われている高級昆布で、昆布の中でも一番高価。北海道知床半島沿岸で採れます。 ※希少価値で高価というよりは、手間暇、人手がかかっているために高価。 ひいただしは少し濁りが出ますが、うま味たっぷりで濃厚かつまろやかなだしをひくことができ、うま味=塩味と感じるほどです。減塩対策としてはおすすめの昆布。利尻昆布や真昆布ほどの香りは立ちません。 その価格から、なかなか日常の家庭料理には取り入れにくい昆布ではありますが、以下のように切れ端をパッケージした羅臼昆布がリーズナブルな価格で売っている場合があるので、とても狙い目です。 ![]() |
その他よく見かける昆布
1.早煮昆布

食べるのに特化した昆布で、成長しきる前に採取したやわらかい昆布です。竿前(さおまえ)昆布、野菜昆布とも呼ばれます。短時間で煮えて煮崩れも少なく、味もとてもしみやすいです。昆布の銘柄はいろいろ。 早煮昆布でだしをひくことはできません。使うために水に浸けて戻しますが、戻した水はかなりの塩味をふくむため、通常これを使うこともありません。 ※日高昆布も食べられる昆布としては同じ仲間ですが、日高昆布はだしをひくことができます。 |
2.切り出し昆布

いろいろな昆布の切れ端などを詰めて売っているものです。お徳用昆布などと書かれている場合も。 銘柄はいろいろですが、写真は真昆布の切り出し昆布でした。60~70℃で煮出す方法でだしをひけば、充分おいしい昆布だしをひくことができます。しっかりとしたうま味の昆布だしをひきたい場合は、1.5 倍量を使っても。 |
3.根昆布

各昆布の根元部分です。写真は利尻昆布の根です。栄養素が多いという点で健康志向的な対象となったりもしています。 かなり粘りが出るので煮出しには向かないと言われますが、上記利尻昆布の根を煮出した場合は、真昆布と通常の利尻昆布の間ほどの塩味を感じるうま味が出ました。 |
昆布の選び方
どの昆布を使用するかは、コスト面で決めることが一番多いと思います。たとえ安い昆布であっても、一番うま味を引き出せる煮出す方法(下記 昆布だしのひき方 参照)を選択すれば、家庭料理においての役割は充分果たせると思います。
お正月や記念日などの特別な日には産地にこだわり、それぞれの特徴を活かしただしをひいてみるのも楽しいです。素材の色を美しく出し、香り高く仕上げたいなら利尻昆布、極上のうまみたっぷりなだしをひき、料理の味の底上げをしたいなら羅臼昆布といった感じです。

私は料理への汎用性の高さから利尻昆布を選ぶことが多いです!
昆布の使い方と保存方法
<使い方>
・汚れなど気になる場合は拭き取ってから使うとよく言われますが、最近の昆布はそれほど汚れたものはありません。気になるようであれば、乾いた布巾でサッとはらう、刷毛でサッとぬぐうといった感じで大丈夫です。
・表面に白い粉が吹いていることがありますが、これは汚れではなくうま味成分(マンニット)です。拭き取る必要はありません。
<保存方法>
・匂いが付きやすいので、空気を遮断できるように保存容器を上手に使います。

・元々密封できる袋に入っている場合は、都度封をしっかりとして常温保存しましょう。そうじゃない場合は、ジップロックなどの密封できる袋に移して管理します。乾燥剤などがあれば一緒に入れても。
・密封袋や保存容器などに入れて冷蔵庫保存でもかまいません。ただし温度差で結露が付くのは昆布にとってよくないので、使う分だけサッと出すようにしましょう。
・長期保存したい場合は遮光した方がいいので、密封袋などに入れたあと透けない紙で全体を包む、プラボックスや缶などにさらに入れるなどして保存します。
昆布だしのひき方

私は「水出し」ではなく、「煮出し」(60~70℃で30~40分)で昆布だしをひきます。
どの昆布であっても、60~70℃の湯で30~40分間煮出します。
詳しいひき方は、以下の写真をタップ、またはクリックするとレシピページに飛びます。


60~70℃で40分煮出した場合の昆布だし4種は以下の通りです。煮出すとこんな感じでいい色が出ます。うま味たっぷり!

水出しについて
「水出し」とは、水に昆布を入れて半日~一晩(24時間)おいた昆布だしのことです。

「煮出し」と「水出し」の見た目の比較を以下に載せておきます。
各昆布、左が「煮出し」、右が「水出し」(24時間)です。うま味や香りはこの色の濃さに比例すると考えます。


うま味がたっぷり抽出される「煮出し」を知ってしまうと、そのうま味や香りのあまりの少なさに「もったいない!」と思ってしまうので、私は「水出し」はほぼしません。
昆布だしを使った料理例
昆布を使った他のだし
ヨウ素についての考え方
昆布には、カリウムやマグネシウム、カルシウム、鉄、ヨウ素などのミネラル、食物繊維など、たくさんの栄養素が含まれています。その中でも「ヨウ素」について少し触れておきます。
ヨウ素=甲状腺ホルモンの原料となりとても大切なものです。成長期のお子さんや妊婦さんにとっても欠かせない栄養素でもあります。ヨウ素不足になると、体がだるくなったり、疲れやすくなったりという影響が出てきます。
ただ、日本人は、日頃からたくさんのヨウ素を摂取しています。昆布(だし昆布はもちろん、塩昆布、とろろ昆布、昆布茶なども含む)をはじめ、わかめ、ひじき、のり、青のり、ところてん、寒天、魚類、貝類など、ヨウ素を多く含む海産物を日常的に多く摂る食生活をしているからです。
万が一、甲状腺の数値に問題がある場合(低くても高くても)、病名が付いている場合などは、主治医に一度、日常のヨウ素摂取についてご相談ください。妊婦さんに関しても、不可欠な栄養素ではありますが、過剰摂取は赤ちゃんに影響が出る場合があるので、摂り過ぎにはご注意ください。
健康体においては問題にはなりませんのでご安心ください。
それでも毎日毎食濃厚な昆布だしを摂取することは避け、他のだし、だしなしの料理、洋食などを上手に組み合わせながら、日々の食生活にうまく取り込んでいきましょう。
※海外のサプリなどをもし飲まれている場合、ヨード卵やイソジンのうがい薬を日常的に使用している場合は、特に過剰摂取にならないようにします。
昆布だしをひく場合、「水出し」であっても「煮出し」であっても出るヨウ素の量は実は同等です。「水出し」は味わいが薄いからヨウ素過多にはならないだろうと思い、毎日昆布水を健康飲料のようにたくさん飲むこと、湯水のようにお手軽なだしとして使うことはあまりおすすめできません。
何事も「適度」であることがやはり大切です。
執筆者
家庭料理研究家:JUNA(神田智美)