砂糖の種類と選び方

砂糖の種類と選び方

砂糖は、お菓子作りから日々の料理まで幅広く使われる調味料ですが、その種類は多岐にわたり、どれをどう使っていいのか迷うこともしばしば。まずはその種類と特徴を知り、正しい知識を得ることが大切です。それにより、料理の幅もグッと幅が広がっていきます。

ー目次ー
砂糖の種類
精製糖とそれ以外
1.分蜜糖(精製糖)
上白糖
グラニュー糖
三温糖
ざら糖
2.含蜜糖(精製糖ではないもの)
さとうきび糖(きび糖) 
黒砂糖(黒糖)
てん菜糖
和三盆
メープルシュガー
きび砂糖
甘さだけではない砂糖の役割
1.保水 
2.でんぷんの老化を防止する
3.その他
砂糖の選び方
1.分蜜等(精製糖)にするのか含蜜糖にするのか
2.調理面から考える砂糖の選び方
砂糖を買うときに何を見ればいいのか
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砂糖の種類

精製糖とそれ以外

砂糖は大きく分けて、精製糖とそうではないものの2種類に分かれます。

精製糖は「悪」であるという話が世の中に多く出回っていますが、塩のお話と同様、必ずしもそういうわけではありません。要は甘さだけを残した砂糖なのか、ミネラル分、他雑味なども含んだ砂糖なのかという違いになってきます。

砂糖のパッケージの裏面には「炭水化物」という項目があります(赤字矢印の「ここ」)。砂糖100g中に炭水化物がどれだけ含まれているかという数字です。砂糖の場合は、単純に=甘さと捉えてください。

それ以外の残りのグラム数が他の成分、またはミネラルなどになってきます。ミネラル分が多い砂糖ほど優秀、体にいい、カロリーが低いなどといった見方がされがちですが、実はそれほど大きな差はなかったり、カロリーが高いものがあったりします。味は、ミネラル分や他成分が多いほど複雑化するため、使い道は限定されます。そもそも砂糖で得られるミネラル分は、塩の時と同様ですが、みそ汁1杯、フルーツ1個、他の野菜、海藻類で無理なく摂取することが可能です。あまりとらわれすぎない方がいいでしょう。

1.分蜜糖(精製糖)

精製糖は、原料糖(※)を遠心分離機で「結晶」と「糖蜜」に分け、その「結晶」からのみ作られる砂糖なので「分蜜糖」と言います。原材料は主に海外産になります。上記写真内の各グラム数はパッケージ裏にある炭水化物の量です。どれも純度高め。

※原料糖とは、砂糖の原材料の筆頭になっているもので、さとうきびやてん菜などから作った砂糖の原料になるものです(さとうきびがメインになります)。

上白糖

和食、和菓子などに使われることから、日本で限定的に使われている砂糖であり、外国では通常見かけません。しっとりとしているのが特徴で、水の状態でも溶けやすく、クセもありません。グラニュー糖に比べると主に「コク」が出るのが特徴です(が、さとうきび糖などに比べるとすっきりと感じます)。甘さの感じ方もグラニュー糖より強め。日本食においては汎用性が最も高く、使いやすい砂糖です。

また「白い」砂糖と呼ばれて悪者扱いされますが、本来砂糖の結晶は「透明」なので、色は白ではなく透明色です(塩の結晶、雪の結晶が透明なのと同じ原理です)。細かい粒子の結晶がたくさん集まって光を反射することにより、白く見えているだけです。

(他のすべての白く見えている砂糖も、実は「透明」ということになります)

グラニュー糖

世界で砂糖といったらグラニュー糖を指します。主に、お菓子作りや飲料などに使われます。完全に甘さだけを抽出した砂糖なので、雑味も一切なく、素材の味を消すこともありません。溶けやすいのも特徴です(水の場合は、上白糖より溶けにくくなります)。上白糖に比べるととてもすっきりとした甘さになり、実際口にしても上白糖ほどの甘さは感じません。製菓のグラニュー糖を上白糖で置き換えることは可能ですが、その場合はグラム数でしっかり置き換えるようにします。

グラニュー糖はさらに製菓専用の粒子が細かくなった細目タイプや粉糖にも加工されます。角砂糖などもこの仲間です。

三温糖

色がついているので、なぜか健康的な砂糖だと思われがちですが、上白糖と同じ精製糖です。上白糖を作る際に残った糖液をさらに煮詰めることによって作るので(三度煮詰めるので三温糖)、「カラメル化」し、色がついているだけです。煮詰めている分、人によっては上白糖より多少甘く感じるでしょう。他に上白糖と違うところがあるとすれば、少々カラメルの香りがフワッとする程度です。そもそも上白糖とは差がほぼないと言っていいので、塩と間違えないように区別したいとか、喫茶店などの店舗でやはり塩と区別するために使うとか、雰囲気がアップするとか、そういった目的で使われたりします。

家庭で料理に使う場合、三温糖を使っていれば健康的ということはありません。煮汁に多少色が出るので、しょうゆ系の煮物や、煮詰めてカラメルの香り(香ばしさ)を引き出す佃煮などに使うといいでしょう。お菓子作りでは、きなこなどと相性がいいです。逆に色を出したくないものには向きません。

ざら糖

上白糖が細かく加工されたものに対して、粗く結晶化した砂糖になります。精製度が高いので、グラニュー糖の大きな結晶バージョンと考えても。主に和菓子などに使われます(おせんべいやカステラの下に敷いてあるものがこれ)。綿菓子の元にもなります。上記写真のざら糖は色が付いた「中ざら糖」ですが(三温糖と同様、カラメル化したものを結晶化、または色をあえてつけている場合もあります)、白ざら糖もあります。料理に使うとすれば、溶けるのに少し時間がかかるので、煮込み系の料理がいいでしょう(魚や肉の煮込み、煮物など)。

2.含蜜糖(精製糖ではないもの)

原材料を見ると、さとうきびやてん菜と書いてあるものが多いですが、それらを元にした原料糖を使っているのは精製糖と同じです。こちらは結晶化したものも糖蜜も一緒に使うので、含蜜糖と言われています。精製されきっていないので、色が茶色いのが特徴。

※糖蜜の部分にミネラルや他成分が含まれています。上段=原材料 下段g=炭水化物量

精製糖に比べると純度が低いものもあり、その分ミネラル、他が多くなります。甘みもそれに準じて少なくなります。

さとうきび糖(きび糖)

上記写真の島砂糖は国産原料(奄美産)で、よく見かける「きび砂糖」(後述)と同じ仲間になります。精製糖よりも「クセ」があり、独特な味わいになりますが黒糖ほどではありません。その「クセ」はいい意味で「コク」と捉えることもできます。炭水化物表示は98.4%とけっこう高めになりますが、実際に感じる甘さは、他の味を感じる分、上白糖より少し控えめに感じます。

製菓・製パンには使いやすく、もちろん料理にも使えますが、料理の場合は上白糖のようなすっきりとした感じにはなりません。それを「クセ」と捉えるか、「コク」と捉えるかは好みになってきます

黒砂糖(黒糖)

黒砂糖は炭水化物量が90.3gとなり、残り10%近くは他成分になってきます(実は残りすべてがミネラルとも限りません)。ここまでくると単純な甘さではなく、かなり風味も強くなって複雑な味わいになってくるので、料理に使うにしても限定的な使い方になってきます。素材の味をかなり変えるので、煮物にアクセントとして少し使ったり、臭みの出がちな魚の煮付けに使ったり、という感じでしょうか。どちらかというと製菓・製パンに使いやすくなってきます。人によっては「塩味」を感じる場合もあるでしょう。

てん菜糖

北海道の砂糖大根(ビート)を原料にした砂糖です。オリゴ糖が含まれるのが特徴。粒が粗いものが多いですが、写真のように上白糖に近い加工をされたものが、最近は北海道以外の地域でも出まわるようになりました。きび糖よりクセが少なくて食べやすく、上白糖にも近い感じです。上白糖と違いがあるとすれば、後味に若干の「塩味」が残るくらいです。とはいえ、料理においてはほとんど素材には影響しないので、使いやすい部類かと思います。

和三盆

和三盆は四国で獲れたさとうきびを使って作ったものに限られます。原料が少ない&作るのに手間がかかるので希少価値があり、価格も高価です。高価=体にいいというイメージを持つかもしれませんが、砂糖にかわりはありません。料理というよりは、和菓子をはじめ、製菓・製パンに使われることが多いです。

メープルシュガー

おなじみのメープルシロップを粉末状にしたものです。ほぼカナダ産。製菓・製パンに使われることが多いです。

きび砂糖

さて、ここで注目したいのが日新製糖さん(カップ印)のきび砂糖です。前述のさとうきび糖(きび糖)と同じ系統の茶色いお砂糖で、原材料は外国製造または国内製造の原料糖、炭水化物量は98.8gになります。

茶色い砂糖といえば、の代名詞的存在ですが、この「きび砂糖」というのは実は商品名(商標登録澄み)であり、上白糖などが砂糖の種類としてパッケージ表に記載してあるのとは少し違ってきます。

商標登録されているため、他の製糖会社が「きび砂糖」とパッケージに書いて砂糖を売ることはできません。もし茶色い砂糖を売りたい場合は、「さとうきびの○○糖」「○○のさとうきび糖」と付けたりして販売しています。含蜜糖の写真の中にある「さとうきびの釜焚島砂糖」がその例です。茶色い砂糖=きび砂糖のイメージが強いですが、実はいろいろな会社がきび砂糖と同系統の茶色い砂糖を出しています。

きび砂糖を作っている日新製糖さんでは「独自の製法」をうたっていて、「通常、原料糖を透明にするまで煮詰める工程(精製)を途中でやめ、原料糖の風味がまだ残った時点のものを砂糖にしている」とし、「含蜜糖」の一種であるとしています。

※そもそも商品名であって砂糖の種類ではないので、そういった砂糖の科学的カテゴリー表には入りません。

味わいとしては、上白糖のような味わいも残しつつ、さとうきびの風味もちょうどいい感じで残しつつ、茶色い砂糖が苦手な場合でも味としてはとても食べやすい仕上がりになっているため、上白糖を好む日本の食卓にすんなりと受け入れられたのだと思います。

ただ、「きび砂糖」=上白糖よりもかなりすぐれた砂糖であり、体にもとてもよく、健康的な砂糖だ!と崇拝しすぎるのは少し危険です。意外と知られていないことですが、きび砂糖は上白糖よりもカロリーは少し高め。また、糖尿病の方がきび砂糖だったらいいのか、予防になるのか、また、きび砂糖ならダイエットになるのか、といったら答えはノーです。

きび砂糖は砂糖であることにはかわりはないので、上白糖とそれほど大きな差はありません。香りも味も茶色い砂糖の中では一番受け入れやすいちょうどよい砂糖である、という結論になるかと思います。

これは砂糖全般に言えることでもあって、黒砂糖やメープルシュガー以外は、特段何か大きな差があるかというと、「あまりない」というのが正直な回答になります。

原材料は国産がいいのであれば、同じきび砂糖でも上記の「プレミアム」だと沖縄産の原料糖が原料になっています。黒糖も少し加えられているので、風味や独特のクセは少しアップします。

例えばこちらは、三井製糖さん(スプーン印)が出している「国産さとうきび糖」という茶色い砂糖です。味、口溶け、粒子の感じなど「きび砂糖」ととてもよく似ています。カロリーは上白糖より低め。

実はこんな感じできび砂糖以外にも茶色い砂糖は市場にあるので、茶色いお砂糖を好んで使っている場合は、いろんなものに目を向けてみるのも新しい発見があっていいと思います。

甘さだけではない砂糖の役割

1.保水

お寿司を作るときに寿司酢を使いますが、意外と多くの砂糖を使用します。それは、砂糖にはごはんから水分が逃げていくのを防いでくれる「保水」の役割があるからです。おいしい寿司飯を作りたいなら、塩の量は控えても、砂糖の量は控えないようにするのがおすすめです。

お肉料理に砂糖を使うと柔らかくなるのも、この「保水」の性質が関係してきます。

製菓で卵白や生クリームに入れると状態が安定するのも、それぞれの素材の水分を保持してくれるからです。

2.でんぷんの老化を防止する

これもお寿司で例えるとわかりやすいのですが、ごはんに砂糖を多めに入れた合わせ酢を混ぜることでごはんのデンプン質の老化が止まり、さらに保水もしてくれるので、ごはんがパサつくのを防いでくれます。

大福や求肥などがやわらかいのも、この性質を利用しています。

3.その他

製パンでは、イースト菌の発酵を促進(えさになる)したり、焼き色を付ける役割を担ったりします。焼き菓子などに使われるバターの脂肪の酸化を防いだり、ジャム作りなどでフルーツの水分を引き出したりも。

砂糖の選び方

1.分蜜等(精製糖)にするのか含蜜糖にするのか

分蜜糖(精製糖)だから体に悪い、精製していない含蜜糖だから体にいい=たくさん摂っていいということは、まずありません。含蜜糖は分蜜糖(精製糖)よりもミネラルを含みますが、その「ミネラル」の部分をどう考えるかによると思います。

ところで、砂糖に含まれるミネラルって何?

砂糖の主な成分は、甘みに当たる炭水化物がそのほとんどを占めますが、それ以外の部分=ミネラルと考えるとわかりやすいと思います。カリウム、マグネシウム、カルシウムなどがそれにあたりますが、それは砂糖の種類によっていろいろになります。人間の体には必要な成分になります。ミネラルが多くなるとそれだけ甘みに相当する数字が下がる分、味わいは複雑化します。

砂糖はその選び方により、体に欠かせないミネラルを得ることができますが、ミネラルだけを重視して選択すると、料理の味わい、見た目、作業性などにもいろいろ影響する場合があります。砂糖は一度にそんなにたくさん摂るものではないので、摂取するミネラルも多いものではありません。ミネラルは他の多くの食品からも摂取できるので、砂糖からミネラルを得ることだけに強くこだわる必要はあまりないと感じます。

砂糖はどんな砂糖も結局「砂糖」にはかわりなく、血糖には影響するものだということを忘れないようにしましょう。たくさん摂ればどの砂糖も体にとっては悪になります。

医療的に糖質制限を受けていないのであれば、味わい、使い勝手、好み、色、金銭面を考慮し、どれを手に取ったとしても「適切な量」を使って行くことがまず一番大切なことだと思います。

2.調理面から考える砂糖の選び方 

クセがなく、きれいな料理に仕上げたいなら分蜜等(精製糖)、コク、クセを出したいなら含蜜糖

特に和食では、分蜜糖の上白糖を使うのか、含蜜糖のきび糖を使うかにより、見た目や風味、味わいがわりと大きく変化します。素材のよさや繊細さを出したいのであれば上白糖を、色を入れたくない寿司飯、煮物などならやはり上白糖を、魚に風味を付けて煮付けるならきび糖、すっきりした煮付けにしたいなら上白糖、きんぴらなどの炒め煮でこっくりとした味と風味を出したいならきび糖、すっきりと上品な甘さに仕上げたければ上白糖といった感じです。

2種類を用意し、その日の気分や好みで砂糖を変えるというのもいいでしょう。

塩と間違えないように見た目で区別したいけど、きび糖ほどのクセや味は求めないのであれば、茶色い三温糖を使っても。

洋風の製菓は基本分蜜糖(精製糖)のグラニュー糖

日本の食卓で日々の料理にグラニュー糖を使うことはほぼありません。メインは製菓になります。もちろん好みで含蜜糖を使ってもかまいませんが、味わいは少しかわってきます。白く仕上げたいお菓子にはやはりグラニュー糖が第一選択になります。和菓子では黒糖や和三盆を使うことも多くあります。

私は、日頃の料理にはほぼ上白糖を使います。製菓は基本はグラニュー糖ですが、時々きび糖を使うことがあるため、その残りを料理に回して消費することがあります。炒め煮などのこっくりとした料理に使うことが多いです。

砂糖を買うときに何を見ればいいのか

各砂糖のパッケージの裏面を見ると、日本で製造した塩の場合は、

・原料糖がどこの国のものか

必ず記載してあります。気にする場合はチェックするといいでしょう。製造方法も小さく記載してあります。

ミネラルについては、パッケージの裏にある栄養成分表示を見るとわかります。必ず炭水化物の量が記載されているので、それ以外はミネラルだとざっくり考えるといいと思います。精製していない含蜜糖だと食塩相当量に多少の数値が出ます。それはミネラルの1つであるナトリウムの量だと考えられます。それゆえ、含蜜糖に塩気を感じることが多くあります。

動画

2021年7月のオンラインレッスンで「砂糖」についてかなり詳しくお話しています。

※以下はレッスン生の方のみ観ていただける動画になっております。

執筆者

 家庭料理研究家:JUNA(神田智美)

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